リンクウィズ株式会社様
浜松からシリコンバレーへ
企業情報
企業名 | リンクウィズ株式会社 |
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業務内容 | インテリジェントロボットシステム ソフトウェアの開発・販売・技術・技術コンサルティング |
所在地 | 静岡県浜松市東区篠ケ瀬町1044-2 (旧:静岡県浜松市中区高林1丁目8-43) |
電話番号 | 053-401-3450 |
FAX番号 | 053-401-3451 |
ホームページ | https://linkwiz.co.jp/ |
お話 | 代表取締役 吹野 豪 様 |
会社の概況を教えてください
2015名3月3名のエンジニアで創業。ロボット自体が考え、動きを補正するソフトウェア「L-ROBOT」「L-QUALIFY」を開発し、単純作業を繰り返す従来のロボットイメージを一新。さらに「世界に誇る優れた技術を持つ人を、ロボットでサポートすること」を第一義に、「日本のものづくり」に新たな価値観を生み出そうと邁進中。
会社の理念・基本方針を教えてください
会社の中心で人間が「世の中をこうしたいよね」と考える。すると人間の周りにいるロボット達が移動を始め、人間がオーダーしたものを創り上げていく。こうした世界はそう遠くない間に夢ではなくなってくると思っています。ロボット化することは、単に作業の効率化を図ることではなく、職人(匠)の技や思考そのものをロボットに引き継がせること。つまり「大事な人材同様のロボットを創りましょう」という発想です。
急速に人材不足が進む今、ものづくり業界で減っていくもの、できなくなる事がどんどん増えてきています。昔のように「技術は見て覚えろ」のやり方で技術継承していくのでは時間が無いのです。だからこそ、自分たちのロボティクス技術を活かしたい! そんな想いから「リンクウィズ」の社名は「人と機械と働き方を繋ぎ、そして最後に人に戻すこと」を「一緒に」目指し、さらに魔法的な「wizard(ウィザード)」にも関連させて名付けました。「人の技を受け継ぐロボットで働き方を革新すること」が私たちのミッションなのです。
幼少期の影響
自分は昔から機械に興味がありました。幼い頃はおもちゃ、その後も自転車やバイクを分解して仕組みを観るのが好きでした。コンピュータとの出逢いは自分が小学生のとき、父が突然パソコンを持ってきたんです。しかし当時はまだネットも浸透していない頃なので、本屋さんでパソコン雑誌を買って勉強しました。
やがてパソコン通信で友達になったアメリカ人とのやりとりで、日本ではまだ流行していないスノーボードを送ってもらうことになったのです。「350$を送ってくれたら、ボードを送るよ」と。無事にスノーボードセットが送られてきたとき、世界はこんなに近いのかと感動。自分の人生を変えた瞬間でした。そのカルチャーショックとも言うべき驚きはもちろんのこと、会ったことも無い異国の地の人とのやり取りで、騙されるかもしれないのに、息子の「やりたい」の言葉に「たとえ失敗してもいいから、やってみろ」と350$を出してくれた父親に感謝しています。
自分も、新しいことにチャレンジしようとする社員を決して止めません。「やってみろ」が基本姿勢。ただ「やる前にリスクは理解した上で頼むよ」とは伝えます(笑)。
大事なのは人間力
ロボティクス技術は機械やシステムの無機質な要素とばかり向き合っているように思うかもしれませんが、何より「人間力」や「コミュニティ」が大事です。匠の技術をロボットにしようとしたら、モノづくりの根幹である道具をいかに使い、素材とどう向き合い、どんな想いで挑んでいるのか…、人間そのものを理解しなくてはそれらを細かなデジタルデータにすることなどできるはずがありません。
そのため当社が人材を選ぶときは、技術能力だけで選択しません。まずは「困っている人を助けられること」が大前提。社内で仲間を助けられない人が、社外で困っている会社を助けることができるでしょうか。大事なのは何より「人間力」です。
コミュニティスペース
社内にはみんなで共有するキッチンスペースや、一般の人や大学生も自由に出入りできる歓談スペースがあります。それは自分たちの仕事が人との出逢いが基本となるからです。新しい発想を生み出す仕事だというのに、会社内だけで開発していても発展はありません。違う分野、若い年代の人との触れ合いが大事。また逆の立場でいえば、学生さんなど、大人と子供の中間の時期に社会に触れ合うことが大切だと思っているからです。自分も留学したときいろいろ悩んだ経験があります。これから就職して人生を選んでいくときに、アドバイスしてもらえる大人の存在が必要だと思うのです。
自分が育ったのは小さな山村でした。しかも両親が飲食店をして忙しかったので、近所の家でご飯を頂くこともしばしば。村のみんながお母さん、おばあちゃんという感じで地域全体で育ててもらったといってもいいでしょう。その御恩を今度は自分が社会へ返すことができればと思っています。とはいえ、最近は訪ねてくる学生さんも多く、就職相談室のようになって嬉しい悲鳴も出ていますが…(笑)。
徳をもって事業の基となす
私は一技術者としてスタートしましたが、社員数が増えてきてからは経営者に注力することを考えてきました。当社の企業理念は「徳をもって事業の基となす」。常にお客様の利益になるかどうかを考えるがモットーです。お客様にとっての利益が当社の技術でないと判断すれば、たとえ競合他社であってもお客様に良い会社を紹介します。こうした姿勢を貫くからこそお客様から信頼をいただける、「まずはリンクウィズに相談してみよう」と思っていただけると思うのです。
2015年にシリコンバレーに派遣された際にこんな言葉を聞きました。「常にギブをするというマインドを持っていなければ、テイクはできない」。つまり人に与えることによって、人が集まり、良い会社になる。自分たちにできる最善を尽くしていくことが、やがてその先の良い結果に結びつくのだと思います。
社員への感謝
この考え方は社員に対しても同じです。売り手市場の時代に当社を選んで働いてくれていることに、経営陣は感謝を伝えなければいけないと思っています。社員が安心して働ける職場が大前提。仕事の必需品や道具を自由に購入でき、セミナー等も必要なら積極的に参加を推奨しています。
また社員がくつろげるスペースを確保してペレット使用の薪ストーブも人気。時には社員のご家族を招いて食事を楽しんだり、子供さんたちが会社見学に来た子供さんたちに事業について説明したりすることもあります。普段から会社へ自由に行き来してもらっているのは、自分自身が両親の働く姿を見て育ったことが影響しているのかもしれません。
グローバル力をパワーに
当社はロシア、フィリピン、アメリカ、マレーシアなどのスタッフも働いているので、日常の中に頻繁に英語が飛び交います。これだけ異文化の人材が一緒に過ごしているのだから、良くも悪くもおせっかいなくらいにお互い気を使うことが大事だと思っています。
普段、それぞれの仕事の合間に意思疎通や意見交換ができるよう、全者通知のソフトを利用。上下関係なく自由に思ったことを言い合える社風ができています。例えば「HPの写真が古いものになってきたので、新しいものを撮影しませんか?」と提案があれば「早速カメラマンを手配します」と返信が入り、「人数が増えてゴミの散乱が気になります」と意見があれば「ランチが終わったら最後の人は片づけましょう」など、皆で解決していく形です。また、新入社員が入ると、その国の料理を作り歓迎会を開くことも。来日したばかりの社員に、女性スタッフが日本料理をレクチャーすることもあるようです。
海外の人はストレートに気持ちを伝え、日本人のような忖度が無いと言われますが、今では外国人スタッフが「まあまあ」と日本人スタッフをなだめていたこともありました。そんな関係性が出来上がってきていることが嬉しいですね。
営業&人材育成のプロ 塩崎 准さん
以前はソフトウェア業界で働いていましたが、先進的な仕事をしている当社に魅かれて2017年にこちらへ転職しました。私の担当は基本営業ですが、ロボットの実験をしたり、新入社員教育をしたりすることもあります。「ロボットプラスソフト」によって、今までできなかった技術を実現していくのが当社の醍醐味。未知の市場を切り拓いていくことにわくわくしています。うちの会社が提供するものは唯一無二のもの。それをお客様に知ってもらい、興味を持ってもらい、納得してもらえることが一番の楽しみです。
吹野社長は、他の人がやらないことを突き進んでいくパワーのある人。
会社自体も役職に関係なく意見を言い合える社風です。ソフト開発をするためのロボ不足を指摘したら、即翌日対応してくれたスピード感も気に入っています。
また、海外のスタッフが多いので発想の違いが良い面も悪い面も勉強になります。自分たち日本人はいろいろと回りくどい考え方をしがちですが、海外での考え方は実にシンプル。ゴールを見定めたとすれば、その最短距離の過程を考えていきます。
自分も英語を上達させたいので、新人のプーさん(マレーシア出身)に営業のノウハウを教えると同時に、英語を教えてもらっています。こうした日常の中で自己啓発できるのもこの会社の魅力ですね。
リンクウィズを世界へ発信する新鋭 プー チャウ イエンさん
マレーシア出身。来日した最初の2年間は北海道、その後名古屋で働き、浜松には2018年秋に来たばかりです。この会社との出会いは本当に印象的でした。当社の面接を受けて合格をいただいた日、そのまま飲み会となりました。そしてなんとお開きになったのは明け方。最初は住んでいた名古屋にその日に帰る予定をしていましたが、結局浜松に宿泊しました。初めてのことでびっくりしましたが、歓迎してもらえたことが嬉しく、忘れられない思い出になりました。
今はまだ技術的に何もできない状況ですが、これからいろいろ学んで、早く会社の力になりたいと思います。
そして自分はマレーシア語、英語、中国語、日本語を話すので、翻訳や展示会で海外のお客様との対応などに力を活かすことができたらと思っています。
日本語の「お疲れ様」という言葉が大好きです。仕事が終わったときに「お疲れ様」と言い合えるとホッとします。
マレーシアでは環境系の仕事をしていたこともあり食虫植物の栽培が趣味。自宅アパートではウツボカズラやハエトリゴケ、モウセンゴケなどを育てています。自分で自炊もしますよ。今度、会社のみんなにマレーシア料理を披露したいと思います。
“笑顔の現場主義社労士”村松のコメント
シリコンバレーにいちばん近く、浜松市を代表するベンチャー企業の一つであるリンクウィズ(株)様を現場リポートさせていただきました。吹野社長は金融機関主催のビジネスコンテストで最優秀賞を受賞されたり、東京でも浜松のベンチャー企業代表としてプレゼンされたりと、元々有名な経営者ですが、社員が10名近くまで増えてきたこともあり、労務管理をきっちり整備していきたいとご相談をいただいたことが出会いにきっかけでした。
まずは就業規則の作成からスタートしましたが、当時からコンプライアンスに対する意識が非常に高いことに驚きました。今だから言えることですが、開発・技術職という職種でしかもベンチャー企業なので、はじめからはなかなか労働法令の遵守は難しいだろうなと思っていました(笑)…。ところが、吹野社長は当時から労務管理に対して非常に意識が高く、労働時間の管理や残業手当の計算方法など労働法令遵守の必要性は当然理解されており、どのようにしたら社員がもっと働きやすい職場環境をつくることができるか真剣に考えられていたことを鮮明に記憶しております。ベンチャー企業といえども、社会から認められ応援される企業は、はじめからコンプライアンス意識が高いことも条件になるのだなと実感しました。
今回の現場リポートで私がいちばん勉強になったことは、吹野社長が「経営者にも社員にもいちばん大切なことは“人間力”だ!そして、ロボット導入の本質は“人材育成”だ!」とおっしゃられていたことです。人間力がなければお客様のニーズにあったよい商品は作れない。お客様の利益にならなければ、会社の利益になる仕事でも受けない真っ直ぐな経営姿勢。職場で困っている社員がいれば助けてあげる思いやり・助け合いの精神。吹野社長が「いい意味でおせっかいも大事」と何度かおっしゃられていたことも大変参考になりました。
吹野社長に起業のきっかけを伺ったところ、浜松の先輩経営者に自分の想いを伝える機会があり、「応援してあげるから、まずやってみたらいいさ!」と想いを伝える先輩経営者が皆、吹野社長のビジョン実現を応戦してくれたとのこと。人生は出会いが大切。一人の力では何もできない。先輩経営者たちから受けている恩を自分が社会へ返していきたい!とおっしゃられていました。「浜松で開発したものを世界へ広げていきたい!そしてそれが結果的に地方創生に貢献できるようになればもっと嬉しいよ!」
これらの想いこそが正しく“やらまいか精神”ではないのかと感じました。私は数年前に大学院で“やらまいか精神”とは何なのかを研究テーマにしており、明確な答えがでずにおりましたが、今回のリンクウィズ様の現場リポートで答えが見えた気がしております。やらまいか企業(やらまいか精神をもつ企業)がまた新たなやらまいか企業の誕生を支援していく。このようなやらまいか企業は本当に素晴らしいと思います。
実は、吹野社長の実家は旧龍山村で私の妻と同じです。また、私と同じで自営業の息子でもあります。吹野社長に対しては個人的にも親近感があり、応援したいという気持ちを強く感じます。私自身も経営者としてやまらいか精神を持ち続けていきたいし、リンクウィズ様のようなやらまいか企業の更なる発展を使命感をもって全力で支援していきたいと思います。