株式会社創生様
通所介護事業「お互いに気を許しあえる関係づくり」
企業情報
企業名 | 株式会社創生 |
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業務内容 | 生体工学研究所、通所介護事業 |
所在地 | 静岡県浜松市中区富塚町1864-1 佐鳴湖パークタウン4-204 |
電話番号 | 053-482-8868 |
FAX番号 | 053-482-8869 |
お話 | 代表取締役・工学博士(東京大学)志村 孚城 様 |
会社の概況を教えてください
私は30年以上にわたり、富士通の研究所や東海大学の生体医工学分野で認知症などの高齢者対応技術の研究・開発に取り組んできました。
自ら培ったノウハウを介護現場に生かそうと、平成22年11月に通所介護事業所「佐鳴台倶楽部」を浜松市中区佐鳴台3-36-17で開設しました。おかげさまで引き続き、平成23年8月には通所介護事業所「入野倶楽部」も浜松市西区入野町9601-2で開設することができました。
一方、主な生体工学研究所の製品としては、「痴呆検査装置、痴呆検査サーバー、痴呆検査クライアント、痴呆検査システム(特許取得)」や「認知症予防のための前頭前野チェック技術」などがあります。
以下は通所介護事業に絞ってお話を聞いた結果を記載します。
会社の理念・基本方針を教えてください
高齢者ケアに特化した事業を、科学的に解析し開拓していくことです。創生は通所介護事業のあるべき理想像を追求しています!
理念
- 心を開いてとけ込める環境や交流の場を提供いたします。
- 認知症に対しては、受容と残存能力へ働きかける介護を提供いたします。
提供する介護
- 「笑顔」「発語」「眼力」が介護の柱です。
- 「視覚」「聴覚」「味覚」「臭覚」「触覚」に働きかけることに注視します。
- 特に、「聴覚」については聴覚検査、補聴プログラムを用意しました。
- 科学的根拠に基づいた、「意欲」を起こす、「創造力」を育む、人との「交流」を促すプログラムを提供します。
会社の特色を教えてください
うちの特色というよりも、2000年に介護保険制度が施行されて以来、介護を「ビジネス」として捉え、介護の本質を知らない異業種から進出してくる会社が非常に多く、介護業界を悪くしていると思います。行政もそんな介護ビジネスを後押ししているから困ったものです。
私は「生」「教育」「死」など、人間の根幹に関わることはビジネスにすべきではないと思っています。
そもそも、ビジネスとは経済活動のことであり、介護のような人間尊重の業務に沿わないのです。伝統のある「医療」は倫理・理念が確立していますが、比較的新しい「介護」には倫理・理念が浸透していないものが多いように思います。
東海大学で認知症の研究を扱うようになって、何とか介護業界に考え方を改めてほしいという気持ちは熱くなるばかりでした。そして、私が求める介護理念を本格的に達成するために、通所介護事業所(デイサービス)を自分ではじめたのです。
一般的なデイサービスでは、危ないことは避けて、午前中に入浴して頂き、昼食後は例えばビデオ鑑賞で静かに時間を過ごして頂き、そのまま帰すところも多いんです。最近はトランプ、花札、麻雀などのゲームや、ジグソーパズル、計算ドリル、ぬりえ、4文字熟語テストなどの脳リハビリをする施設も増えています。計算ドリルで血流が良くなると言っている大学教授もいますが、私の実験からはあまり血流が増加しません。それは、疑問です。高齢者に、トランプや花札、ジグソーパズルで子供のように遊びなさいと強要したり、やさしい計算ドリル、ぬりえ、4文字熟語テストなどで時間つぶしをさせることは、高齢者にとって苦痛です。苦痛な脳リハビリは脳機能の改善には繋がらないと警笛を鳴らしたいです。高齢者は安心と安らぎを求めていますから、デイサービスは高齢者に安心感を与えるプログラムを追求しなければなりません。アルツハイマー病の高齢者にトランプゲームの「神経衰弱」をしていただくといつもビリになり苦痛ですし、前頭前野が障害されている認知症の方に判断力を求めてはやはり苦痛を強いることになり、ダメです。障害箇所をあまり刺激せず、脳のいきいきとしている箇所(残存能力)を活かすようなプログラムは、たとえ難易度が高くても苦痛では有りませんので、いいと考えています。高齢者は安心と安らぎを求めていますから、デイサービスはこのように高齢者に安心感を与えるプログラムを追求しなければなりません。そのような点では、うちは経験豊富な奥山さんにプログラムアドバイザーになってもらっており、大変助かっています。
うちの佐鳴台倶楽部は経験者と未経験者2名の職員でスタートしましたが、今では利用者ごとの残存能力を9名の職員が把握できるようになってきています。奥山さんに職員教育も手伝ってもらっていますが、利用者を人生の先輩として敬う所作が身に付き、順調に成長してくれています。その他の大きな特徴としては、聴覚を刺激するために補聴器を使い、認知症の改善を図った取り組みをしています。これは多分日本でうちだけでしょう。利用者のゆったりとくつろぎ安心した生活の実態を見学し認知症改善成果を見たいと、大手介護施設に属しているケアマネ-ジャーさんたちもよく見学に来ます。
経営的に難しいところは、やはり人材教育ですね。おかげさまで口コミで我々の新しい取り組みは評価され第2の事業所として入野倶楽部を8月1日にオープンさせました。この時一番苦労したのは人材育成です。新しい理念で運営する事業所・店舗を増やしたいと考えますが、職員を育てないと前に進めませんので簡単ではありません。介護サービスでは、職員が商品だと実感しています。
これからの目標は、私たちの現場から得た成果を学会で発表して、厚生労働省に働きかけて世の中を変えていきたいです。そのために、うちでは学術的な証拠を取り続けています。例えば、補聴器を使った聴覚プログラムが認知症に効果が高いことは、奥山さんの研究論文で報告されています。
家族的雰囲気な施設にできたことは大きな成功でした。「お互いに気を許しあえる関係づくり」という理念の影響からか、うちの施設では利用者どうしの仲が非常にいいです。例えば「俺の方が物忘れがひどいよ。今朝の朝食を覚えていないよ。お前はまだあまいな(笑)」など会話も聞こえます。充実した介護には、家族と共同作業も欠かせません。施設と家族との連携プレーにはよく気を配っています。
日本の正しい介護サービスの中軸モデルデイサービスになりたいです。これから介護業界を担っていく若者のためにも「使命感」をもって取り組んでいきます。
あったか母さん 高柳 佳世子 様のご紹介
私はこの施設開設から働いています。学校卒業後、印刷会社に勤務しましたが1年くらいで結婚退社して、それ以降は販売職などでアルバイトをすることはありましたが基本的にずっと専業主婦でした。介護業界は全くの未経験で、まさかこの業界で管理職を任せられることになるとは思っていませんでしたが、偶々奥山さんからお誘いをいただき、違う世界を見るのも勉強になると思い39歳のときに転職しました。
ずっと家庭がいちばんの生活をしてきましたので、両立してやっていけるかと心配でしたが、今では思い切ってここで働いて良かったと思っています。というのは、介護も子育ても相手を支える仕事、「思いやりの気持ち」がいちばん大切なのです。利用者さんの笑顔に触れると、私自身も元気になって家で子供たちにも優しくなれます。子供たちも私に協力しようと、ご飯を自分で作ってくれたりもします。確かに子供と接する時間は短くなりましたが、その分接するときは密度が濃くなりました。家事は全くしなかった主人も、皿洗いなど家庭のことをやってくれるようになったんです(笑)。お互いに働く身として、労わる気持ちが増えましたおかげさまで私自身はもちろんですが、主人と子供たちも成長できました。
最近では、もっと早く介護の仕事をやっていれば、子育てが上手かったかも…なんて考えたりもします(笑)。
管理者としてどうかといえば、まだまだ勉強することはたくさんあります。スタッフの指導の仕方など、自分の至らないところは社長や奥山さんにアドバイスをもらいながらやっています。
この職場は、人間味あふれるスタッフばかりでとても仕事がしやすいです。社長が良い方だから、スタッフがいい方向に育っていると思います。
利用者さんからの「ありがとう!」の一言がとても励みになります。これからも、利用者さんと一緒に楽しく心地いい施設を作っていきたいと思います。
施設一の元気印 池島 華那 様のご紹介
私は前職でも介護職を3年ほどしていた経験者で、この施設には開設からお世話になっています。すごく可愛がってもらった祖父と祖母が早くに亡くなったため、私は中学生のときから将来は介護の仕事をしたいと思っていたんです。前職で事情があり偶々転職を考えているときに、奥山さんからお声をかけていただきました。
この施設の特徴としては、何といってもプログラムが利用者のことを考えてつくられており、レベルが高いことです。包丁や針は使わせない施設が多いけど、ここはどんどん使わせます。午前と午後でプログラムが分かれていることにも驚きました。補聴器のシステムなんて全国でここだけだと聞いています。利用者の相性を考えて席順を決めたり、私でもできることは提案しています。
認知症の方から予想外の返事が返ってくると、とても嬉しいですね。例えばこの前なんて、利用者をお風呂に入れているときに、突然「もっと歳がいってると思ったわ。あなた落ち着いてるわね。あなた好きよ。」といわれたんです(笑)。利用者の体調が悪いときに早く察してあげられなかったり、場を盛り上げることが上手くいかなかったり自分としても課題もたくさんあります。
私は経験者ですが、まだ若いし人間的にはまだまだ未熟です。社長や奥山さんに相談すると、優しく相談にのってくれます。他のスタッフにも人生経験豊富な方がたくさんいて、本当に親身になって教えてくれるんです。
ここで働いていると、自分自身が日々成長に繋がっています。プログラムをやりながら、自分も楽しめる。本当に感謝しています。
これからも、もっと知識・経験を増やし、どんな場面でも対応できるようになって利用者さんどうしが発語をする架け橋になりたいです。そして、利用者さんに元気を与えていきたいです。
“笑顔の現場主義社労士”村松のコメント
志村社長は佐鳴台倶楽部を開設されたときに、知り合いの不動産会社社長からご紹介いただきました。大学などいろんなところで講師をされている凄い方だと話を聞いており、はじめて会社にお伺いしたときはとても緊張したことを覚えています。しかし、予想と違い、志村社長はとても温厚で優しく謙虚な方でした。話を聞く中で、長年、富士通で研究をされてきて、東京大学の工学博士号も取得されていることに驚きました。正直いって、なぜこんなに凄い方が浜松で介護施設を?と思いましたが、志村社長の「今までの研究成果を実務で試したい」「これからは現場から学んだ成果を学会、国に伝えていきたい」などとても熱い気持ちに感銘を受けました。現職では、「BME(医工学)on Dementia(認知症)研究会会長」「日本早期認知症学会理事長」をされているそうです。
そして、創生さんをしっかり支えているのが奥山惠理子さんです。今回は奥山さんにも偶々お話を伺うことができました。奥山さんは「(株)浜松人間科学研究所」の所長をされており、創生さんの介護プログラムや社員教育を志村社長からエグゼクティブアドバイザーとして依頼されているとのことです。現在、聖隷クリストファー大学大学院博士課程に在学中で博士号取得を目指されており、将来的には志村社長のように介護医療現場で研究成果を生かしていきたいと意欲的でした。
志村社長、奥山さんお二人とも同じことをおっしゃていました。「研究のための研究であってはならない」「研究と実務を両立させていくことが大切だ」。私の仕事も労働法の教科書を勉強しているだけでは、ほとんど意味がありません。実際に会社の労働現場を目撃し、社長や社員の気持ちを聞くことによって、はじめて分かることがあります。そして、実務から学んだことを労働法の勉強にも生かしていく。この現場リポートという取り組みも私自身がとてもいい勉強になっています。介護医療の世界も労務管理の世界も正しい手法は同じだなと思いました。私は文系人間なので、今回の現場リポートは聞き慣れない言葉が多くまとめるのが大変でしたが、その分とても得るものが大きい貴重な体験ができました。
管理者の高柳さんのお話から、私も女房を4人の子供が大きくなったら働きにだそうと思いました(笑)。
その業界の未経験者でも努力次第で、周りから信頼される管理者になれるいい見本だと思います。元気な池島さんのお話も、これから介護業界で働くことを希望する若者にとって大変ためになるものでした。
今回の現場リポートで私がいちばん印象に残っている場面が2つあります。ひとつは、プログラム終了後、送迎する利用者を志村社長が自分の車の助手席に載せて、シートベルトを締めてあげている場面。もうひとつは、志村社長が花に水をあげている場面です。「偉くて権威もあり、周りから尊敬される方ほど謙虚で優しい人なんだよ」と、かつて学校の先生に教えてもらったことがありますが、本当なんだなと目の当たりにしました。私も志村社長のような人格者になれるように精進していきたいと思います。