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【 第92回・労務管理を会話で学ぶ 🤔 】「精神障害の労災認定の考え方」
近年、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害についての労災請求が増えています。
今回は、仕事が主な原因で発病した精神障害の労災認定の考え方について解説します。
実際の現場では、リアルな疑問が?? 早速、現場をのぞいてみましょう!
先日、ある会社から「精神疾患に罹患した従業員に『原因は会社だ』と訴えられ、対応に困った」という話を聞きました。
現在当社で問題が起きてはいませんが、今後そのようなケースが発生した場合、どのような流れで精神障害の労災認定がされるのか考え方を知っておきたいと思います。
また、未然に防止できることがあれば、気を付けていきたいです。
わかりました。
まず、精神障害における労災認定のための要件は以下のとおりです。
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
①の認定基準の対象となる精神障害は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(ICD-10)※1第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害(F0)及びアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。
業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)などとされています。
まずは認定基準の対象となる精神障害であるかどうかを確認するということですね。
そうですね。
次に②では、発病前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事について、業務による強い心理的負荷が認められるかどうかを確認します。
「※2業務による心理的負荷評価表」により、「強」と評価された場合は要件②を満たすことになります。
発病前の6か月をみるということですね?
はい。
注意点として、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものは、発病の6か月よりも前に始まり、発病まで継続していたときは、始まった時点から心理的負荷を評価することになっています。
なるほど❗
内容によっては6か月よりも前をみることがあるのですね。
カスタマーハラスメントについても、労災の認定基準に追加されたということを耳にしましたが、これはどのようなことでしょうか?
2023年9月から労災の認定基準が改正され、「業務による心理的負荷評価表」の中に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という項目(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されています。
この項目について、心理的負荷の強度が「強」と判断される具体例としては、例えば以下の内容があります。
・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた。
・顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた。
・心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった。
当然のことですが、会社として対応が必要であれば、すぐに対応・改善していくことが求められますね。
そうですね。
実務上は非常に重要な点になります。
最後に③では、業務以外の心理的負荷による発病かどうか、個体側要因による発病かどうかを検討し「※3業務以外の心理的負荷評価表」を用いるなどして、心理的負荷の強度を評価します。
「業務以外の心理的負荷評価表」の強度Ⅲに該当する出来事がなく、かつ、顕著な個体側要因がないということであれば、労災認定になるという流れになります。
要件を①から順に確認していくということですね。
考え方が一通りわかりました。
会社としては、業務による強い心理的負荷がかからないように労務管理をしていくことが求められますね。
ありがとうございました😀
POINT
①労災認定の流れとして、3つの要件を順に確認していくことが求められる。
②2023年9月から労災の認定基準が改正され、「業務による心理的負荷評価表」の中に、カスタマーハラスメントの項目が追加された。
※1、2、3については厚生労働省HP『精神障害の労災認定』のパンフレットから確認できます。