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【 第45回・労務管理を会話で学ぶ 🤔 】  「労災の休業補償 最初の3日間の取扱い」

従業員が業務中にケガをして療養(休業)が必要となった場合、労働者災害補償保険(労災保険)の給付申請をおこないます。
ですが休業の初日から3日目までは労災保険からの支給はありません。この間(待期期間)は、業務災害の場合、事業主が休業補償を行うことになります。


実際の現場では、リアルな疑問が?? 早速、現場をのぞいてみましょう!

工場で働く従業員が仕事中にケガをしてしまいました。
障害が残るような事故ではありませんが、2週間の自宅療養が必要と診断されました。
今後、労災保険の申請(療養補償給付と休業補償給付)手続きを行う予定ですが、休業補償給付は休業4日目から支給されると聞きました。最初の3日間についてはどのように対応すればよいのでしょうか?

それは大変でしたね。少しでも早い回復を願っています。
今回の対応に当たっては、労働基準法と労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」という)の関係を確認することが重要です。

労働基準法ですか?
当社は労災保険に加入しているので、当然、労災保険から給付が受けられますよね?

本来、仕事中のケガに関する補償は、労働基準法に基づき会社が行う責任があります。
この補償に関して、労災保険法がカバーするという形になっています。
つまり、会社は労災保険に加入し保険料を払い、被災者が給付を受けられることで、労働基準法に基づく補償を行う必要はない仕組みになっています。
ただし、従業員の休業に対する補償で、最初の3日間については労災保険から補償が行われません(待期期間)。そのため、この待期期間については会社が補償する必要があるのです。

なるほど。そのような関係なのですね。

その際、3日間のカウント方法について間違いが多いので注意が必要です。

○所定労働時間中に労災が発生し、そのまま病院へ行った場合
 労災発生日を含め3日間が待期期間
○所定労働時間に労災が発生したが終業時刻まで1日勤務し、所定労働時間後に病院へ行った場合
 労災発生日の翌日から3日間が待期期間
○所定労働時間後の残業中に労災が発生し、病院へ行った場合
 労災発生日の翌日から3日間が待期期間

労災発生の時刻と、いつ病院へ行ったのかで取扱いが異なるのですね。
今回は所定労働時間内に労災が発生しました。
それが先週金曜日の午前中で、そのまま病院に行きました。

それなら金曜日を1日目としてカウントします。
さらにこの3日間は会社の所定休日に関係なく暦でカウントします。
土曜日・日曜日が所定休日であっても待期期間は金・土・日曜日の3日間になります。

当然、土曜日・日曜日は自宅療養をしていたそうなので、4日目となる翌週の月曜日からは労災保険の休業補償給付が支給されるということですね。

はい、そうですね。
日曜日までの3日間は労働基準法に基づき平均賃金の6割を支給する必要があります。

承知しました。
ところで、労災事故が発生した日は数時間働いていましたが、その部分はどのように考えればよいですか?

働いた数時間分は当然、通常の給与を支払ってください。
その後、病院に行って治療のため働けなかった時間については、平均賃金から働いた数時間の給与分を除いて、その6割を計算して支給する必要があります。


ただ、細かい計算になることもあり、このようなケースでは労災が発生した日については1日分の給与を支給する場合が多いように思います。

そうなんですね。
ちなみに当社の休日であった土曜日・日曜日はどのように考えればよいですか?

はい。この従業員さんが時給者や日給者の場合には、土曜日・日曜日も平均賃金の6割を支給すればよいのですが、月給者の場合には少しややこしいです。


まず、不就労の日について月給から給与を減額しないいわゆる完全月給の場合には、土曜日・日曜日も給与が支給されたことになります。


一方、欠勤日数に給与を減額するような取り扱いをしており、今回の労災事故後、不就労分の給与を控除する場合には、土曜日・日曜日に給与が支給されていないことになります。
したがって、土曜日・日曜日も休業補償を払う必要があります。

なるほど、給与の支払い方によっても対応が異なってくるのですね。
一度、会社が支払うべき休業補償の金額等を計算してみます。
ありがとうございました。


■ワンポイントアドバイス

業務外で発生したケガや病気(私傷病)で休んだときの給付としては、健康保険の傷病手当金があります。
傷病手当金も3日間の待期期間がありますが、この3日間は連続している必要があります。
一方、労災保険における休業補償の待期期間は連続している必要はなく、例えば災害発生の翌日に何らかの理由で出勤せざるを得なかったとしても、出勤した日を除き3日間を待期期間としてカウントすることができます。
労災保険の休業補償給付と待期期間の取扱いが異なることを押さえておきましょう。


■参考リンク
厚生労働省「労働災害が発生したとき」
厚生労働省「労災保険」