社会保険労務士法人村松事務所 株式会社浜松人事コンサルタント社会保険労務士法人村松事務所 株式会社浜松人事コンサルタント

お役立ち情報・BLOG

【 第12回・労務管理を会話で学ぶ 🤔 】  「在籍型出向者の社会保険の取扱い」

在籍型出向をさせた場合、自社での社会保険はどうなるのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症の影響により雇用維持が困難な業界から人手不足になっている業界に、在籍型出向するケースが増えています。在籍型出向なら出向期間終了後は確実に自社に戻ってきてもらえるメリットがあります。
今後はますます在籍型出向により雇用維持に取組む事業所が増えてくるかもしれません。 
従業員を在籍出向させた場合、社会保険の取扱いはどうなるのでしょうか?


実際の現場では、リアルな疑問が?? 早速、現場をのぞいてみましょう!

当社の従業員を在籍出向をさせたいと考えています。詳細はこれから検討することになりますが、社会保険の取扱いについて教えてください。

わかりました。
まず雇用保険については、出向者は出向元企業と出向先企業の双方と雇用関係がありますが、両方で適用されるわけではありません。生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている企業の方で適用します。

本人には当社から賃金を支給し、出向先企業から当社へ賃金の負担金を支払ってもらう予定です。この場合には、雇用保険は当社のまま加入し続けることになりますね。

そうですね。
次に労災保険ですが、実際に出向者が労務提供を行う先で適用となるため出向先企業で適用します。
出向先で被保険者となる手続きは不要ですが、労災保険料は出向先の被保険者として算入することになります。出向元で出向者の賃金を支払っている場合には、出向先企業に支払った賃金額を連絡し、出向先で出向者の賃金を含めて労災保険料を算出します。(労働保険の年度更新)

労災事故は実際に働いている現場で起きるため、労務提供を行う出向先で加入するのですね。

その通りです。
最後に、健康保険・厚生年金保険は出向元企業と出向先企業のうち、使用関係があり報酬(賃金)を支払う企業で適用を受けます。
今回は自社で賃金を支払う予定ですので、現行のままの適用になります。
なお、出向元企業と出向先企業の両者で賃金を半分ずつ支給する場合などは、『 二以上事業所勤務届 』を提出することになりますのでご注意ください。

ややこしい手続きになるのですね。

賃金の支払い方等で取扱いが異なってくるため、出向規程で社会保険の取扱いを定め、具体的な出向の内容を出向先企業との出向契約書など書面で取り交わすべきでしょう。

なるほど φ(.. )
以前、出向規程を作成していたと思いますので確認してみます。
また不明点が出てきたら、相談します。
よろしくお願いします (*’▽’)

【 豆 知 識 】
◎出向とは?
・労働者が出向元企業と何らかの労働関係を保ちながら、出向先企業との間において

 新たな労働関係に基づき一定期間継続的に勤務する形態のことをいう

◎在籍型出向とは?
・出向のうち、在籍型出向は出向元企業と出向先企業との間の出向契約によって、

 労働者が出向元企業と出向先企業の双方に労働関係があるものをいう

 < 在籍型出向の図・出典:厚生労働省サイト >

POINT

① 雇用保険、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業・出向先企業の賃金の支払い状況によって適用が異なる。
② 労災保険については、賃金の支払い状況に関わらず、出向者が労務提供を行う企業で適用となる。
③ 出向における社会保険の取扱いを出向規程に定め、実際に出向を行う場合には、出向元企業と出向先企業との出向契約書の中で社会保険の取扱いを明確にする。